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2014年01月23日

[映画]「ヒミズ」

園子温。日本。2012年。
公式サイト:http://himizu.gaga.ne.jp/(※音声注意)

一言でいえば、アンニュイな雰囲気の漂う青春映画である。

主人公の住田くんは、無気力とも諦観ともとれる気質を持っており、
一見するとリアリストである。

だが一方で、「普通」になりたいという、ある意味で途方もない夢を抱いており
(「平凡」で「普通」な生活を実現するというのは、実は結構大変ではないか)
その観点から言えば、理想に向かって生きようとしている側面もある。

ヒロインの茶沢さんは、他のクラスメイトとは違う雰囲気を持つ住田くんに
惹かれていて、何かにつけて住田くんに絡んでくる。
表情がころころ変わる子で、あざといけれども実にかわいい。

いろいろなトラブルが身の回りに起こり、
ふたりの前には、先行きの見えない「暗闇」が目の前に広がる。
人によっては絶望を感じるような類の「暗闇」である。
それでも、ふたりはどうにか前へと進もうとする。
たぶん、希望を失っていないから。

映画の最初と最後で、「主人公(たち)が走る」というモチーフが採用されている。
この「走る」というのは、もしかしたら、
前向きに生きようとする気持ちの表れであるのかもしれない。
そう解釈すると、住田くんは、徹頭徹尾、前に進むこと自体は諦めていない。

「普通」を目指していたことも彼なりの「前向き」であったし、
普通になれないことを悟って、「おまけ」の人生を生きようと決心したことも
彼なりの「前向き」の表れだと考えることができる。

今の社会は、変化が著しく、先行きを想像することが難しい。
つまり、将来の自分がどのようなものになっているのかを
はっきりと具体的に想像しにくい社会であるともいえる。

この作品は、そんな社会でもどうにか暮らしている人々の
内面の繊細な部分を、よく描いていると思う。

ただ、人間の内面の描写がよいだけに、
わざわざ2011年の大地震と結び付ける必要はなかったんじゃないかと思えてしまう。
この結び付けが、自分にとっては、ちょっと蛇足的な感じに思えた。

投稿者 むすてぃー : 2014年01月23日 04:04

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