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2013年08月12日

[雑事]胡乱な会話

「こんにちは」

「いらっしゃい」

「あの、ここで神を売っていると聞いてやってきたのですが……」

「はい、扱ってますよ。いろいろな神を販売しています。よく頑張っている人とか、才能溢れる人へのギフトとして喜ばれる商品です」

「それなんですけど、あなたは、よく頑張っている人とか、才能溢れる人に対して、やれ神だ、ほら神だと言っているようですが、そうやって神なるものを安売りするのをやめてもらえませんか?」

「そう言われてましても、実際に神を受け取っていただいている方からは好評を得ているので、おいそれと引き下がるわけにはいきませんよ。こちとら、こうしないとご飯を食べることができませんからね」

「そもそも私が知っている神とは、この世界においては唯一絶対の存在で、この世に2つと存在しないはずなんです。あなたが売っている神はまがいものです。それに、そう易々と人に与えることができるほど、神は軽い存在ではないんですよ」

「なるほど、そうなのですね。わかりました」

「そうですか、わかっていただけましたか、それでは……」

「あなたのおっしゃる神は、あなたのおっしゃる世界においては唯一絶対の存在。つまりあなたは、私とは違う世界の存在ということですね」

「何を言っているのですか? あなたは私と同じ世界に存在しています。このことは明白ではないですか? ならば、あなたが信じる神も唯一絶対の存在以外にはありえないんです」

「おや、私が認識しているあなたが、この世界に厳然と存在しているとどうしていえるのですか? もしかしたら、私の目に映っているあなたは、私の脳内で作り出された妄想の産物であり、実際にこの世界には存在していないかもしれない。あるいは、別世界の存在が送り込んだヒューマノイドかもしれない。逆に、あなたが認識している私も、あなたと同じ世界に実体を持たず、ゆえにあなたの認識する世界において厳然と存在するものではないかもしれない。もしそうでないとおっしゃるのなら、あなたはそれをどのようにして証明するのですか?」

「神はあなたをそのようには作っていません」

「神の作りたもうた従僕にすぎない人間であるはずのあなたが、なぜ神の行いや考えを語ることができるのでしょうか? 神の絶対的な正しさが、時代によって変遷してきたのは、決して神の気紛れではない。人間が神の語りに対して勝手な解釈をし続けてきて、その解釈が変遷しているからでしょう?」

「だからといって、神を100円で売るなんていうのはあまりにも安売りしすぎです。なぜあなたはそんなにも神の価値を低く見積もるのですか?」

「そりゃああなた、この世界にはそれだけ多くの神がいるからですよ。同格の神が多数存在すれば、価値は相対的に小さくなります」

「しかしこれでは、神の威厳が薄れてしまうではないですか! こんなのは冒涜です! 即刻やめるべきです!」

「あなただって、『あなたは実は神なのだ』と言われれば、いい気分になったり、何かしらの使命感を覚えたりするでしょう? 神は、こんなにも手軽にいい気分にさせてくれる。たとえ多数存在することによって相対的に価値が減じられていたとしても、多くの人は自分が神だと言われれば嬉しいものです。こんなに手軽に人間を喜びに導けるからこそ、神は素晴らしく、崇高な存在なのです。あなたもそう思うでしょう?」

「私は神の崇高性を否定しません。ですが、神の価値を下げることは、神の威厳を損なう行為です。それは何としてもやめていただきたい」

「相対的な価値は下がっていますが、絶対的な価値は減じられてなどいません。実際に、神をギフトされた方は一様に喜んでいるのですから」

「いや、あなたは神を不当に貶めている。神を売るという行為がまさに不当な貶めだ」

「だから、あなたは私と違う世界の存在なのでしょう? あなたの言う神と私の言う神が同じ存在であると、どうやって同定できるのですか?」

「……」

「……」

「……わかりました。では、その、あなたが神と呼ぶものを1つください」

「はい、100円です。まいどあり」

「……」

「おお、あなたが神か! まじ神だわ! 神神アンド神! まさに神!」

投稿者 むすてぃー : 11:56 | トラックバック